原・白川法律事務所　hara shirakawa law office

裁判例においては、ここ２０年以上の間、１億円以上の賠償金の支払いが命じれたケースも少なからず生じています。これを労災保険給付との関係で分かりやすくご説明させていただきます。

労災保険と民事賠償金の支払い例　
　　　　　　　　　　　　　　
☆　天辻鋼球製作所事件の支払い例
（労災保険）
休業補償給付　　　　　　　　　　２，６８７，９８２円　
傷病補償年金（約４年９ヶ月分）　８，７１３，０１４円
合　　　　計　　　　１１，４００，９９６円

（民事賠償金）
将来の介護費用　　　　　　　１０３，７８０，０００円　
介護用器具・自動車等購入費　　　５，０９０，０００円　　
家屋改造費等　　　　　　　　　　１，２００，０００円　
後遺障害逸失利益　　　　　　１１０，２２０，０００円　
後遺障害慰謝料　　　　　　　　２８，０００，０００円　　
弁護士費用　　　　　　　　　　１７，０００，０００円　
家族１名あたりの固有の慰謝料　各５，０００，０００円（合計２名）　
家族１名あたりの固有の弁護士費　　各４００，０００円（合計２名）　
２７６，０９０，０００円

（実際の判決では、２０％の素因減額がなされ、かつ労災給付と会社からの既払い金が控除された）

この例にみられるように、労災保険給付と、民事賠償給付との間には２４倍もの差異が生じることがあります。その主な理由としては、労災保険では、将来の介護費用や逸失利益、それに慰謝料、弁護士費用などが支払われないことにあります。

裁判例における高額賠償金の支払い例
以下には過去に裁判所によって支払いが命じられた高額賠償の例をいくつか挙げてみます。もちろんこれで全部ではなく、これはほんの一部であるに過ぎません。

☆　天辻鋼球製作所事件（大阪地裁平成８年４月２８日判決）→１億９９００万円の支払いを認める判決（部署の配転に伴う月１００時間を優に超える長時間労働、２６歳、小脳出血による半昏睡・ＡＤＬ全介助状態）

☆　康正産業事件（鹿児島地裁平成１０年２月１６日判決）→１億９４００万円の支払いを認める判決（レストラン支配人、３５歳、月１００時間を優に超える長時間労働、心室細動による低酸素脳症で意識不明の寝たきり状態、控訴前に２億４０００万円を支払う内容の和解成立）

☆　電通事件（最高裁平成１２年３月２４日判決）→差し戻し審の東京高裁で１億６８５７万円の和解金支払い（極度の時間外労働・休日出勤、首つり自殺）
☆　川崎製鉄水島工場事件（岡山地裁倉敷支部平成１０年２月２３日判決）→1億１３５０万円の支払いを認める判決（極度の時間外労働・休日出勤、会社の本館ビル屋上から飛び降り自殺）