原・白川法律事務所　hara shirakawa law office

安全配慮義務（健康配慮義務とも呼びます）とは、職場環境の整備、作業段取りの指示等において、会社が従業員の生命・健康を保護するよう配慮すべき義務のことです。
この義務は長いこと法律上では制定されておらず、最高裁判所が判例上の義務として認定してきました。

そして、平成１９年になって労働契約法が制定された際に、ようやくこの安全配慮義務が、同法の第５条に規定されるようになったのです。
この義務の対象は従業員の身体上のケガや疾病と精神上の疾病に分かれます。
ただ、軽微なけがや疾病の場合には労災請求をすることによって労災保険が支払われ、これで済んでしまいますから、この義務が持ち出される場合とは、かなり症状の重いケガや疾病ということになります。

ところで、会社が健康配慮義務違反を原因として損害賠償義務まで負うのは、会社側を被告とする訴訟が提起され、かつその訴訟において、会社側の過失（「結果回避義務」）の存在が認定された場合、即ち、従業員側が勝訴した場合に限られます。

そして、この安全配慮義務に基づく損害賠償請求訴訟においては、主張・立証責任は従業員側が負うこととされていますので、この訴訟で従業員側が勝訴することは容易ではありません。本人訴訟で行うことはほぼ不可能といえますし、勝訴の確率を高めようと思えば、安全配慮義務に詳しい弁護士に依頼するほかないだろうと思われます。

なお、この安全配慮義務違反を理由に請求されるケースは、労災給付内容に不満がある場合（労災給付が画一的給付であるため給付金額が高くないこと）や、会社側の対応が誠意に欠けると思われる場合などです。
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