取扱い案件

労災請求について

労災請求とは

労災請求とは、従業員として会社の業務に従事している中で、負傷したり、身体、精神の病気になったり、死亡してしまった場合に、治療費、休業補償費などが労災保険によって支払われる制度のことをいいます。

従業員や遺族が、労働基準監督署に労災請求すると、労働基準監督官が調査を行い、「労災事故」であると認定すると、労災保険が支払われる仕組みになっています。

但し、労災保険が支払われるためには、会社が労災保険に加入している必要があり、大手の会社はほとんど加入していますが、中小・零細の会社の中には加入していないところもあります(平成16年度の統計では、全国の会社のうち加入率は87%になっています)。

労災保険が支給されるためには、「業務遂行性」と「業務起因性」という二つの要件が必要とされます。この要件については、後にご説明します。

どのような事故が労災保険給付の対象となるか

業務中に、爆発事故とか機械の操作ミスなどによって負傷してしまったような場合が労災事故の典型的なケースです。通勤途中に交通事故にあってしまった場合なども、労災保険の対象になるということは皆さんご存知でしょう。

最近目立って増えてきているのは、長時間労働とか、会社内での人間関係の悪化などが原因して、長期休職になったり、過労死してしまったり、過労によってうつ病に罹患し、その結果自殺してしまう、いわゆる過労自殺のケースです。これらに事故も、業務に起因したものと判断される場合には、労災保険の支払い対象になります。

過労死の典型的なケースとしては、脳・心臓疾患といって、くも膜下出血、脳梗塞、急性心不全、心筋梗塞などがあります。

最高裁判所の判例でも、いわゆる職場のストレスが原因して、過労死したり、過労自殺してしまったケースについて、労災事故であると認定したものが多数あります。

労災事故と認定されるための要件は?

労災請求は「業務上負傷し、または疾病にかかった」ことが要件とされています(労基法75条)。ここにいう「業務上」と認定されるためには、業務遂行性(従業員が事業主の支配下にある状況下で事故が発生したこと)と業務起因性(従業員が使用者の支配下におかれていることにともなう危険が現実化したものであると経験則上認められること)という2つの要件が満たされることが必要です。

まず、業務遂行性との関係ですが、過去に過労死・過労自殺などで亡くなったケースを見ると、亡くなった場所が自宅とか、通勤途中というケースがかなり多くなっています。この場合には、強度のストレスを受けたのが、会社であり、業務中であったことが認定されれば、倒れたり亡くなったりした場所が社外であったとしても、問題なく労災事故として認定されます。

同様に、会社を退職後に倒れたり亡くなったりした場合でも、事故発生が退職からあまり経っていないこと、退職前に強度のストレスを受けていたことが証明されれば労災事故として認定されます。どの程度の期間内である必要があるかといえば、明確な基準はないのですが、おおむね3ヶ月以内程度といえるでしょう。もちろん、退職後にどのような生活を送っていたかという事情が重視され、その事情も合わせて判断されることになります。

労災請求が認められるための、もうひとつの要件として、「そのストレスが過労死・過労自殺などという結果をもたらすほど強力なものであった」ということがあげられます(業務起因性)。

ここでまず問題になるのは、ストレスに対する強さは人によって異なるものですから、だれを基準として、その強度を測ればよいのかという点です。

厚生労働省が公表している「判断指針」では、「本人がその心理的負荷の原因となったできごとをどのように受け止めたかではなく、多くの人々が一般的にはどう受け止めるかという客観的な基準によって評価する必要がある」と述べています。この考え方が労災認定実務の原則になっています。

労災保険によって支給されるもの

労働基準監督官による調査の結果、労災事故として認定された場合には、被災従業員や遺族に対し、申請した項目に応じた補償金、給付金が労災保険から給付され、企業はその限度において賠償金の支払いを免れます。

労災保険によって給付される項目のうち、被災従業員に対して支払われるものは、以下のとおりです。

  1. 療養補償 治療に要する費用の全額が支給され、健康保険にあるような自己負担分はありません。具体的な支給項目は、診療費、薬剤費、手術料、看護料、移送料などとされています。
  2. 休業補償 休業補償給付として給付基礎日額(直前3ヶ月間の賃金の平均日額)の60%、休業特別支給金として20%が、治療のため休業している期間の日数分支給されます。
  3. 障害補償給付 後遺症が残る場合には、その程度に応じて1級から14級までの等級が認定され、その等級に応じて障害補償給付、障害特別支給金が支給されます。なお、1級から7級までの重い後遺症の場合には年金として支給されます。
  4. 傷病補償 業務上の負傷や疾病が療養開始後1年6ヶ月を経過しても治癒せず、その障害の程度が傷病等級に該当するときは、傷病補償年金、傷病特別支給金、傷病特別年金が支給されます。
  5. 介護補償 傷病補償年金受給者について、その障害が一定のもので、かつその者が現に介護を受けているときに支給されます。
    不幸にして、死亡事故が発生してしまった場合、その遺族に対して支払われるものは、以下のとおりです。
  6. 遺族補償 遺族補償年金、遺族特別支給金、遺族特別年金が支給されます。年金の金額は給付基礎日額を元に計算されますが、請求者と被災従業員との関係や遺族の数によって支給される額が異なることについては、次項にご説明するとおりです。
  7. 葬祭料 通常の葬祭に要する費用が、葬祭を行う者(遺族とは限りません)に対して支給されます。支給される額は、「315、000円+給付基礎日額30日分」か、「給付基礎日額60日分」のいずれか高い方の額とされています。

会社に対して、損害賠償を求めることもできる

労災補償の支給金額が不満な場合、あるいは労災請求が認められなかった場合などに、会社を相手方として、損害賠償の請求をするという道も開かれています。

但し、この場合には、会社側に「過失」が存在することが要件になります。「過失」とは、簡単に言えば「落ち度」ということです。会社は雇用している従業員に対して「健康配慮義務」と呼ばれる義務を負っており、「落ち度」があったと裁判所に認定されると、「健康配慮義務違反」として、従業員やその遺族に対して損害賠償を負うことを命じられます。

この賠償金の請求をするためには、民事裁判を起こす必要があり、それなりに難しい問題があるのですが、このあたりの問題について勉強してみたいという方には、「弁護士と学ぶ 健康配慮義務」という本(原哲男・白川敬裕共著、発行フィスメック)をお勧めします。

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